「ご恩返しの心」が 私たちのおもてなし。 
「生まれ育ったところの魅力って、普段その中で生活しているとなかなか気が付かないですよね。お客様から『いいところですね』って褒めていただいて、改めて気付くことが今でもありますよ。」
そう語るのは、喜多方市でそば店を営む〈女将さん〉たち。空き時間を利用して何名かが集まり、近況を話し合いながら情報交換を行う。今回の話題は「おもてなし」だ。
「私たちは、喜多方という恵まれた土地に生まれ育ったことを、とても幸せに感じているんです。そしてそのことに感謝する気持ちと、他の人にも幸せのお裾分けやご恩返しをしたいと思ってお店に立っているんですよ。お店に立つと、お客様とのふれあいも生まれます。雑談や世間話の中から『いいところですね』『来て良かった』などと言っていただけるとうれしいですよね。その言葉で、私たちもこの街の魅力を再確認することになります。そうするとまた、ご恩返しをしようということになる。その繰り返しですね。」
「こんな遠いところまで、電車賃・ガソリン代かけて、よく来てくださった、と感謝しながらお客様に接しています。『おいしかった』と言ってもらえるのもうれしいのですが、『来て良かった』と言ってもらえると本当にうれしいですね。」
「私たちは感謝の気持ちで接して、お客様は『おいしい』『また食べに来ます』と言ってくれる。それで充分ですよね。」


オイシイそばは
大地からの「ご褒美」。
喜多方市は、平成18年1月、喜多方市と耶麻郡熱塩加納村・塩川町・山都町・高郷村が合併し、現在の喜多方市となった。それぞれ地域に根ざした食文化があり、中でも「そば」は各地区ともに全国的にも有名な産地である。
「それまで山都町のものだった『飯豊山』が、合併で喜多方市全体のものになって(笑)、飯豊山の風景、水、温泉など、自然の恩恵を存分に受けることができるのはうれしいですね。」
飯豊山の豊富な伏流水は、冷涼で昼夜の温度差の激しい気候と相まって、良質なそばを育む。また、飯豊山には落葉樹が多いため、四季を通じて肥沃な大地をつくり出している。
「冬は雪が降ると大変だけど、『ご褒美』も多いんです。雪と落葉樹のおかげで天然の肥料を多く含んだ土地になり、食べ物がとても豊かになるんですね。もちろん、その大地から滴る水はミネラル分が多く含まれているから、水もおいしい。」
「紅葉もキレイですしね。」
「私は東京生まれで、喜多方に嫁いできました。それまでは、キュウリは甘くなくて、トマトは酸っぱいのが当たり前だと思っていたんです(笑)。土地が豊かだから食べ物がおいしいということは、私が一番実感しているかもしれません。特に、喜多方に来て最初に食べたのがおそばで、東京の有名店よりおいしいのには驚きました。ですから、他からみえたお客様には、自慢しながら接客しているんですよ(笑)。」

そば文化を誇りに
思うから、威勢もいい。
「喜多方に暮らす私たちにとって、そばは文化そのものです。地元で穫れたそば粉を使って自分たちでそばを打ち、お店では、ゆったりとした雰囲気で、会話をしながらじっくり食してもらう。地元の人も、他からみえた方も、同じテーブルでそばを楽しんでいただく。そば店にこそ『人情』があると思いますよ。」
「人情や人との交わりを末永く大切にしていきたいですね。」
「みんながそばの文化を誇りに思っているから、威勢も出ます。そばは最近、健康食・美容食としても注目されていますよね。威勢が良くて健康で、美容にもいい。大地のご褒美は、私たちに元気を与えてくれるんですよ。それをお客様にご恩返しするわけです。」

「おいしかった」 「来て良かった」。
お客様からいただく「ひとこと」が女将さんたちを元気にする。自分たちも知らなかった喜多方の魅力を、お客様から教えてもらうことがあるからだ。すると、女将さんたちは教えてもらったことに感謝の気持ちを込めて他のお客様とも接する。そのお客様は、女将さんたちのもてなしを「ウレシイ」と感じ、「来て良かった」と言う。…この繰り返しなんだと女将さんたちは語る。
女将さんたちのもてなしを「ウレシイ」と感じる理由は、そば屋という空間を舞台とした、お客様と女将さんとの心の交流である。そしてそのテーブルには、オイシイ喜多方のそばがある。